2009年6月7日日曜日

赤のファウスト 千秋楽の前の日

 
せんがわ劇場で行っている「赤のファウスト」もいよいよ明日千秋楽を迎える。
明日はもうソールドアウトしてしまったが、当日来てくれたお客は何とか入れようと思っている。
劇場に行き、みんなの顔を一人一人覗き込むと、やつれてはいるが、目の輝は失っておらず、芝居に対する思いが漲っている。
彼らの顔を見ると、良い芝居なんだと思えて、そこはかとないパッションを貰える。

そして少しずつだが芝居も動いて来た。
音楽劇としては成功したと思っている。苦労した甲斐があり、良い舞台になった。座組が良いのだから当然なのだが、課題も明確になり、明日は出来る事を皆が精一杯やるだけだ。


最近、僕は舞台の完成度を高めることに勤めている。何故なら観客は実に多様であり知識や美意識も芝居のセンスも天と地の違いが、観客席にはひしめいているのが現状だ。

人間は多様で有るべきであり、受け止め方も多様で有って欲しいと思ってきた。
しかし、僕が言う多様性とは、感受性とか考え方や生き方の事であり、今や記号的概念化が進む現代に果たして、多種多様であることが生み出す弊害の方が気になり始めた。やりたい作品を観客に提示するには完成度という力が必要と思える。 この完成度を少しでも上げようとすると、気概とか経済的問題とか、叱咤しなければならない時がしばしば訪れる。これが僕の疲れの基か?

でも、何とか良い舞台にしなければと思う一心でキャストやスタッフへ掛ける語調も荒く粗くなってしまう。個々が持つ矛盾は重々承知だが、やはり舞台作は極力妥協はしたくない。

今回は今回でまた一段完成度を上げた舞台公演を行えた。でもまだまだ、頂きは見えて来ない。 畜生。ゲーテさんハードル高いぜ!

暫くこうした挑戦が続くのだろうか?
僕の気力と体力が失われない限り出来るだけ高見に登りたい。
とうに自分だけでは限界を感じている、志を共に出来る者達と一緒に踏ん張りたい物だ。僕に翼があれば頂まで一人で飛んで行きたいものだが、翼もなければ体力も忍耐もなくなってきている。

今回は嘗ての懐かしい人達が観に来てくれて、久しぶりに再開が適った。僕にとって劇場は時空を飛び越える翼の生えた大鳥のような物なのかもしれない。狂おしいほど懐かしい記憶が蘇ってくる。
昔の友達はみんなばらばらに散ってしまってはいるが、僕の呼びかける声に耳を傾けてくれて本当に嬉しく有難く、そして切ない。

あと一日。まだ終わっちゃいない。
まだまだ先へ行ける作品なのだから持てる全ての気を舞台に注ぎ込もう。
攻めて攻めて攻めきろう。


こんな所で満足などしていられない。
しなやかな僕の戦いはまだまだ続く。

次はドイツからアンダルシアへひとっ飛びでロルカの「血の婚礼」だ。

 
 



 

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