2009年10月8日木曜日

すべては、ここから始まり出す。

「赤のファウスト」出演者達
左からダンサーの吉沢 恵さん、宮崎敏行さん、木村準さん、西郷まどか、谷 修、成田明加ちやん、新井 純さん、桑原なおさん、坂元貞美さん、薬師寺尚子君、手塚謹弥、姫宮みちりちゃん、石井ひとみ嬢、蜂谷眞未、地曳宏之君、そして森勢ちひろ。



先日、雨の中、池の畔の洒落たイタリアンレストランを借り切って本チラシの裏面に載せる集合写真の撮影をした。




出演者16名スタッフ、5名がこじんまりしたレストランにひしめいた。
それも朝、かなり早くにボッとした頭で、お互いに一度っ気に顔を合わすのだから、変なモノだ。僕だけが全員と会って話をしているから少し余裕があるが、老いも若きも緊張するのだろうと思うと可笑しさがこみ上げてくる。留置場にたまたま一緒に入った罪人のような感じかな?


しかし、ウンプテンプ・カンパニーでは最早恒例になっているチラシの集合写真だ。
僕がチラシのレイアウトなどをしなければならないので、デザイナーさんのような格好良いチラシなど作れやしない。
芝居作りは難しいと思わなくなったが、広告デザインは奥が深く芝居作りで一番、経験がない分労力と頭を使う。
要するに、僕なりにチラシに力を注ぎ込めないとダメなのである。力のあるモノを作りたい。その力とは何だ?
一つ言えるのは、良くある出演者一人一人の顔写真を載せている例のチラシの裏だが、一体いつ撮った宣材写真だよと思わすものが混ざる。あれだけはケツの穴が痒くなるほど恥ずかしい。


かつて劇団に居た時は、みんな揃って撮るなど当たり前であったが、こうしたこともいつの間にか出来なくなってきた気がする。



この時期に出演者が全員が揃って写真を撮る事自体かなり大変だ。
制作をした経験の有る人なら分かるだろうが…、合理的に行かないのが芝居、大変さやめんどくささを背負いこむのが、また芝居だと思っている。
のっけからの朝まだきの撮影。皆、お互い名前も分からず困惑しながら、沸々と出演者達の確かな本能が動き始めてくるのを感じる。






昨今、芝居を観に行くと沢山の折り込みチラシを貰うが、チラシはセンス良く綺麗でおもしろそうに思わすチラシがあるが、その芝居を観に行くと…あれ別物?その手合いのモノが多すぎる。
ちょっとセンスがあり勉強すれば、デザイナーさんがillustratorを使って簡単に綺麗にチラシを作ってしまう、これもご時世なのだ。本当に便利になったものだが…。誰が何のために作ったのだろか、演出は舞台美術はと分業化が進む。






資本主義全盛(スターリン共産主義の時も)の中で成長した「生産効率」と言う名のもとで、大事なモノが次々その本質を失っていく。いや、正確には、いつの間にか生じた様々な「制度」を疑うことすら出来ず考えなく受け入れてしまっているように思える。
折り込み業者なるものまで小劇場に入り込んでしまったのが怖い。
そんなにみんな仕事がしたいのかよ?



以前情報誌の「ぴあ」が、チケットぴあなるものをコンピューターを導入して、商いをやり始め出した時があったが、その時はまだ物議を呼んだ。
とかく物事が変質する時は、常に最初は氷山の一角なのであるが、一度それを受け入れてしまうと、後はなし崩し的にテクノロジーという名の怪物が、効率化と経済性という美名の名のもとに、元々の本質が流れ去られてしまう。



でも人それぞれ、チマチマと面白可笑しく、楽に小金を貯め、ちょっと贅沢に少しオシャレに生きていきたいのであれば、それもまた良しなのだろうが…。僕は面白いとは思えないだけだ。
オヤジの愚痴のように思えるだろうが、楽しいことはもっと沢山あるぞ、そう言いたくなる。(やっぱりオヤジだ)






僕の芝居作りは否応なくそうしたした世の中の仕組みに抗ってしまう。
演劇がマス化出来ない仕組みの中に成立する表現行為なのだから、当然と言えば当然なのだと思っている。
バブル以降の若い世代の者たちに失われつつある不条理な物事とその本質を伝えられるかどうかが、僕の本当の戦いなのだろう。






「モノを知らない若い演劇人が多すぎる、男優に多い」俳優を仕事にしたければ、もっと言葉を覚えて貰いたい。
要するに沢山本を読めと言うことだ。
それから間違っているのは、映像と舞台は基本が違いますよ。
同じなのはどちらもかなり本気でなければ続けられないと言う事なのだ。



アイドルやイケメン俳優を使って客集めしたい気持ちは分かるが、そんなに舞台が簡単に踏めるのが安直だ。演劇が集客命に走りすぎて、自分で自分の首を絞めている気がする。



最近、演劇の経済性のたがが外れたのか、不況だというのに入場料が暴騰しだした。どう考えても今が踏ん張りどころだと思うんだけどな…。
自分の立っている足元の砂をせっせと掘っている感じだ、とうの本人は映像に出たい一心なのか?に、しても自分の公式プロフィールにPV出演まで書くなよ。
ありゃ小遣いが稼ぎに、こっそりするモノだろう。
言い出したらきりがないから止めよう。



若い頃、コンピューターグラフィックスなどと言う言葉すら無かった時代がある。



その頃、平野甲賀さんのデザイン事務所に遊びに良く伺った。(本当は用事を言付かっての使いっ走りだが)平野さんは淡々とブツブツ呟きながら、細かい手作業で貼ったり切ったりしていた、大変な職人芸のようだったが実に味わい深い仕事をしていた。その後に美味しい珈琲をごちそうになり、20才そこそこの若造に四方山話をしてくれたのを思い出す。






とにかく、ここから始まり出すのだ。ウンプテンプ・カンパニーの芝居作りは…。





0 件のコメント: